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翌日 日曜日の朝、思いのほか早く目がさめてしまった母は

大学時代の1年間を過した女子寮を見に行った。

毎日歩いた坂道。川の向こうを走る山手線の緑色のラインの列車。

よく通った本屋さん、お弁当屋さん。こわごわのぞいていたボクシングジムも健在だ。

開店したばかりだった当時は流行の最先端に見えたカフェバーも

ずいぶん黒ずんだ外観ではあるが、まだ頑張って営業している。

  部下に、カフェバーってなんすか?て聞かれちゃったよ。と男子が言っていたな。

  カフェバーって何だ?


30年のときがたって街の風景はずいぶん変わってしまったけれど、

ちゃんと残っているお店はあるんだな。なんだか、嬉しくなる。

昨日の25年ぶりの再会を思い返して、母は思う。

  みんな見た目は変わってしまったけれど、
  
  中身は学生のときと同じだったなぁ。

お酒が入るとにこやかな笑顔を浮かべ、すぐに居眠りを始める先輩は

やっぱり、すぐに眠ってしまった。

当時写真係だった先輩は、パーティー会場でもカメラを構えていた。

面倒見の良かった先輩は、やはり取りまとめ役で、

水割りを作るのが上手かった女子は、昨夜もみんなにお酒を頼まれていた。


懐かしい高田馬場の街めぐりを終えて、

10時半に阿佐ヶ谷で二人目の友人と4年ぶりの再会を果たし、

1時半に吉祥寺で三人目の友人と待ち合わせをした。

毎日毎日通り抜けていたサンロードを歩く。

入り口のマクドナルドと出口近くのSEIYUは健在だ。

つぶれそうだったカーテンやさんは、今もつぶれそうだが、なぜか営業中。

さらに練馬方面に向けて足をのばす。

ケーキ屋さんはパン屋さんにマイナーチェンジ。

小さな医院は画廊へ、コンビニは不動産屋さんへと変貌をとげていた。

汗ばむほどの陽気の中、さらに友人に付き合ってもらって、

5年ほど住んでいたロフトタイプのアパートを探しあてる。

当時は新築で、母が一番乗りの住人だった。

1K + ロフト タイプで出窓もついている2階の一番端っこの部屋。

白い壁にみどり色の屋根。30年たったというのに、しっかり残っていた。

しばし感慨にふけって眺めている。

そして、急にボクが恋しくなり、子犬を見たいといって、

友人にペットショップに連れて行ってもらった。黒のトイプーの赤ちゃんを見つめる。

昔しょっちゅうのぞいていた器屋さんは今もにぎわっていた。

母は、ボクのお土産として仏様用の器を買った。

  近くにドンキホーテあるよね。

  それ、ロジャースだよ。


いつの間にか記憶がゆがんでいるところに、25年のときを感じる。

そして、PARCO2階のテラスでアイスココアを飲み、4時に4人目の友人の待つ東京駅へ向かった。

家族のためにお菓子を買おうとしている。友人のオススメの甘いお菓子を2種類購入。

八重洲口のスタバで8年ぶりに会うというその友人と旧交をあたためた。

なんだか頼りない母が心配で、友人は新幹線ホームまでついてきて見送ってくれた。


隙間産業のようにきっちり合間をうめて過ごしたあっという間の2日間だった。

昨日の朝とは逆向きの新幹線に揺られ(それも父が手配した)

父が駅まで車で母を迎えに行く。無事、我が家に到着。

出発から帰宅まで父のお世話になった母。ある先輩は、

  オマエ、よっぽど愛されてるか、メチャクチャ頼り無いと思われてるかのどっちかだぜ?

どちらも違います、先輩。父は、管理することが好きなのです。

手際よく物事が進まないとイラつくたちなのです。どんな場合でも。

ボクのお葬式も、実に手際よくテキパキとすすめてくれました。


さて、2日ぶりの我が家はどう?オカアサン。

ボクの仏壇のお線香の灰を確認している。お線香はOK。

お水は新鮮だ。でも、オヤツのお皿はずっとカラのままだったよ。

子どもたちはお土産のお菓子を早速ほおばっている。

リビングに寝転び、サッカーの試合をみるオトウサン。

また、日常が戻ってきた。


母はボクの仏様用の器を洗って、写真の前に置く。

ボクの納骨がすんだら、この器にボクのエサとお水をいれて

供えようと、考えている。

非日常を過ごして、母は気持ちを少し切り替えることができたようだ。

ボクの死を、近視眼的に捉えるのではなく、

大きな時の流れのなかで、ボクと過した年月を

かけがえのない大切な15年と思えるようになったみたいだ。

大きな収穫といえよう。

だって、同じ場所と同じときにとどまることは無理だから。

時計はチクタク、時を刻み続ける。休むことなく。

ボクと別れた4月5日にとどまり続けることは、できない。

それは、ボクも同じだ。


25年ぶりに会った仲間たちは、それほど変わっていなかった。

みんな当時の面影を残していたし、結局のところ思い出を共有した仲間たちは

何年たとうが、思い出を手がかりにして瞬時にふたたび仲間に戻ることができる。

だったら何年たっても、ボクと家族の思い出だって色あせることはないはずだ。

ボクの一生がすべて詰まった濃密な15年間。

ボクというシルバーのトイプーの始まりから終わりまで、家族と共に過ごした15年間。

母は、時がたってボクの思い出が薄れていってしまうのではないかと

心配していた。そんなことになったら、罪悪感にさいなまれそうだった。


ボクを失ってから、2ヶ月。家族がボクを話題にして、笑うこともある。

でも、ふとしたはずみに寂しさが込み上げてきて、涙ぐむときもある。

父は今ごろになって、ボクがペットボトルの水を飲む音が聞こえることがあるという。

次女は、その規則的な音が何の音かわからなかった頃、とても怖かったと告白する。

きっと何年たっても、ボクは家族の一員の銀ちゃんとして、話題にのぼることだろう。


東京から帰って、母は風邪をひいて寝込んでしまった。

夕食も作らないで、早々にベッドに入って休んでいる。

たっぷり汗をかき、熱も下がったようだ。

明け方、ボクの夢を見た。

その夢の中でも、ボクは一度死んでしまったことになっている。

でも、なぜか生き返って母と遊んでいる。

元気に走り回るボクが突然倒れる。

母がボクを抱きかかえて、父に言う。

  ねぇ、銀ちゃん一度死んじゃったよね?また、死んでしまうの?

父がなんて答えたかはわからない。

母がボクのカラダに顔を埋めて、銀ちゃん、と呼び続ける。

シルバーのカラダの毛は晩年と同じく、少し薄くなって、

肌色の素肌が透けて見える。

ボクのにおいをかぐ母。銀ちゃんのにおいだ、と懐かしく思う。

楽しい思い出だっていっぱいあるはずのに、

よりによってこんな夢を見るなんて。

目を覚ました母は、リアルにボクを抱いた感覚が残っていることに驚く。

鼻先に触れるボクの毛の感触も、そしてにおいも。

でも、うなだれることは、ない。涙は流れてしまったけど。

夢の中でも、やっぱりボクを失うことが怖くて怖くて仕方がなかったけれど、

思う存分、強く抱きしめることができた。

大丈夫、ボクの最後も含めて、大切な思い出なんだよ。

思い出がボクと家族をつなぎ合わせる。

きっと、何年たっても。

たとえ、子どもたちが大人になり、

両親がオジイサンとオバアサンになっても。


ボクは、近いうちに虹の橋に向けて出発することになるだろう。

そして虹の橋に着いたら、たくさんの仲間たちと楽しく暮らすのだ。

大好きな両親との再会を、楽しみに待ち続けながら。

器
ボクへの東京みやげは器だった 古風な柄の・・・

カフェバー
これが、カフェバーなるもの

山手線
女子寮から毎日眺めていた川の景色 遠くに山手線が走っているのが見える






コメント

  1. モコ&あん | -

    そうだよ。
    絶対に15年間の思い出は色褪せることはないよ。
    銀ちゃんを思い出すことは日常に沢山あるからね。

    道を歩いていても・・
    TV観ていても・・
    読書をしていても・・
    そして・・
    夢の中でも・・

    銀ちゃん。
    オソラのドッグランで仲間と楽しく過ごしてね!

    ( 21:10 )

  2. アトリエミルン | -

    モコあんさんへ

    モコあんさん
    力強く太鼓判、北海道からアリガトウです!
    ドッグラン、生前はなんと一度も行ったことなし。
    お空でデビューいたします!
    ホッカイドーの広々草原も駆け抜けてみたいものです。

    ( 21:40 )

  3. 生きてる限り
    銀ちゃんとの15年は
    アトリエミルンさんとご家族の心に
    しっかりと刻まれて
    いつでも懐かしむことができるんですよね☆

    ノスタルジーな東京での2日間が
    アトリエミルンさんの治癒力を高めたのかもしれませんね
    疲れちゃった心に
    懐かしくて心地よい風が吹いて。。☆。*
    銀ちゃんへのお土産っ
    素敵な器だわぁ~♪

    銀ちゃんっ☆
    ママは今日も頑張ってるよ~(^_-)b

    ↓アリスの就寝は。。
    我が家の多頭飼いの掟により
    後輩犬は
    寝室のバリケンで就寝なんですっ(^_^;)

    ( 23:16 )

  4. アトリエミルン | -

    ティクレアさんへ

    ティクレアさん
    コメントありがとうございます。
    心は回復したものの、体はついていかなかったようです。
    早めに休んだため、回復しつつあります。
    思い出は強力な味方ですよね!
    しかし、あの器、地味すぎるかも・・・
    はずしたかもしれません~
    ステキといってもらえて嬉しいです。

    ( 12:44 )

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